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T君が今年一月、突然小松市会議員選に出ると宣言し、そしてこの日曜日めでたく当選を果たしました。 知名度、組織、おまけに金もないT君の出馬表明には当然周りも困惑しました。お手伝いをさせてもらった、それからの三ヶ月間の出来事は、もし私が伊丹十三なら「お選挙」という映画を撮るだろうと感じる日々でした。 味方と思った人が他陣営に、その逆も、疑心暗鬼と不可解な糸が絡みあったトリッキーな世界、それが選挙の世界なのでした。 当選の翌日、T君と近所のお礼に歩くと、道行く人が立ち止まり握手を求めてくる、自転車を降りて祝福してくれるおばさん達、一夜にしてT君は有名人と化したのでした。「立小便もできない・・」とは本人の弁。 1957年、映画「死刑台のエレベーター」で一夜で有名人となった無名監督、ルイ・マルはヌーベル・バーグの貴公子となったようにT君も突然違う世界にほうり込まれたのでした。 挨拶まわりの最後、喫茶店で飲んだコーヒー代をカウンターの見知らぬおじさんが、お祝いだといって払ってくれました。 これはいよいよ大変なことになった、と本人と私はその時気づいたのでした。
写真上 : 当選達磨目入れ式 写真下 : 「死刑台のエレベーター」M・デイビス
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